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雇用保険に加入できる役員・できない役員の違いとは?初心者向けガイド

  • 執筆者の写真: あいパートナーズ
    あいパートナーズ
  • 8月23日
  • 読了時間: 13分

更新日:9月18日

この記事は、会社の役員や経営者、または人事・労務担当者の方に向けて書かれています。「役員は雇用保険に入れるのか?」という疑問を持つ方に、雇用保険の基本から、役員が加入できるケース・できないケース、手続き方法や注意点まで、初心者にもわかりやすく解説します。


役員の雇用保険加入について正しい知識を身につけたい方は、ぜひ最後までご覧ください。


役員

✅役員は雇用保険に入れるの?


会社の役員や取締役は、原則として雇用保険に加入できません。雇用保険は「労働者」を対象とした制度であり、役員は会社の経営に携わる立場であるため、一般の従業員とは異なる扱いとなります。


ただし、例外的に「使用人兼務役員」など、一定の条件を満たす場合には雇用保険に加入できるケースもあります。まずは、雇用保険の基本や役員と従業員の違い、そしてなぜ役員が原則対象外なのかを詳しく見ていきましょう。


そもそも雇用保険ってなに?


雇用保険とは、労働者が失業した場合や育児・介護などで働けなくなった場合に、生活や再就職を支援するための公的保険制度です。会社が従業員を雇用する際には、原則として雇用保険への加入が義務付けられています。


保険料は会社と従業員が負担し合い、失業手当や各種給付金が支給されます。この制度は、労働者の生活の安定と雇用の促進を目的としています。


  • 失業時の生活保障

  • 再就職活動の支援

  • 育児・介護休業給付


役員と従業員のちがいとは?


役員と従業員の最大の違いは、会社との契約形態と業務内容にあります。従業員は会社と雇用契約を結び、指揮命令のもとで働く「労働者」です。


一方、役員は会社の経営に関与し、委任契約に基づいて業務を行います。そのため、役員は労働者とはみなされず、雇用保険の対象外となるのが原則です。

項目

従業員

役員

契約形態

雇用契約

委任契約

業務内容

指揮命令下での労働

経営・管理

雇用保険

原則加入

原則対象外

基本的に役員は対象外の理由


役員が雇用保険の対象外となる主な理由は、会社の経営に関与し、労働者としての「指揮命令関係」がないためです。雇用保険は、会社の指示に従って働く労働者を保護する制度であり、経営判断を行う役員はその趣旨に合致しません。


また、役員報酬は労働の対価ではなく、経営責任に対する報酬とみなされるため、雇用保険の適用外となります。


✅雇用保険に入れる「使用人兼務役員」って?


一部の役員は「使用人兼務役員」として雇用保険に加入できる場合があります。これは、役員でありながら実際に従業員と同じように働き、会社から給与を受け取っている人が該当します。


たとえば、取締役でありながら支店長や工場長などの現場責任者として日常業務に従事している場合です。このようなケースでは、役員報酬とは別に給与が支払われ、労働者性が認められるため、雇用保険の被保険者となることが可能です。


使用人兼務役員とはどんな人?


使用人兼務役員とは、会社の役員でありながら、従業員としての業務も兼ねている人を指します。具体的には、役員としての経営判断だけでなく、日常的に現場で働き、会社の指揮命令に従って業務を行っている場合です。


このような役員は、役員報酬とは別に給与が支給されていることが多く、実態として労働者性が強いと判断されます。


  • 取締役兼支店長

  • 取締役兼工場長

  • 取締役兼営業部長


雇用保険に入れる理由


使用人兼務役員が雇用保険に加入できる理由は、実際に労働者としての実態があるからです。会社の指揮命令下で働き、就業規則や勤務時間に従って業務を行っている場合、雇用契約に近い関係とみなされます。


そのため、雇用保険の趣旨である「労働者の保護」に該当し、被保険者資格を得ることができます。

役員の種類

雇用保険加入可否

通常の役員

不可

使用人兼務役員

可(条件あり)

よくある例(支店長や工場長など)


使用人兼務役員の典型的な例として、取締役兼支店長や取締役兼工場長などが挙げられます。これらの役職は、経営判断だけでなく、現場の管理や従業員の指導など、日常的な業務に従事していることが多いです。


そのため、役員報酬とは別に給与が支給され、労働者性が認められやすくなります。ただし、実態が伴っていない場合は認められないこともあるため注意が必要です。


  • 取締役兼支店長:現場の運営や従業員管理を担当

  • 取締役兼工場長:工場の生産管理や安全管理を担当

  • 取締役兼営業部長:営業現場での指揮や実務を担当


どんな条件なら役員でも加入できる?


役員であっても雇用保険に加入できるのは、一定の条件を満たす場合に限られます。主なポイントは「労働者性」があるかどうか、役員報酬と給与のバランス、そして就業規則に従っているかどうかです。


これらの条件を満たしていれば、役員であっても雇用保険の被保険者となることが可能です。以下でそれぞれの条件について詳しく解説します。


「労働者性」があるかがカギ


雇用保険に加入できるかどうかの最大のポイントは、「労働者性」があるかどうかです。労働者性とは、会社の指揮命令下で働き、就業規則や勤務時間に従って業務を行っているかどうかを指します。


役員であっても、実態として労働者と同じように働いていれば、雇用保険の対象となる可能性があります。


  • 会社の指揮命令に従っている

  • 就業規則や勤務時間が適用されている

  • 役員報酬とは別に給与が支給されている


役員報酬より給与が高いと有利


雇用保険の加入審査では、役員報酬と給与のバランスも重要なポイントです。一般的に、役員報酬よりも給与の方が高い場合、労働者性が強いと判断されやすくなります。


これは、実際の業務が経営よりも現場の仕事に重きを置いているとみなされるためです。逆に、役員報酬が高く給与が少ない場合は、労働者性が認められにくくなります。

役員報酬

給与

労働者性の判断

高い

低い

不可

低い

高い

可(有利)

就業規則に従っているかも重要


役員であっても、就業規則や勤務時間、休日などの労働条件が従業員と同じように適用されているかどうかも重要な判断材料です。


就業規則に従い、タイムカードで出退勤を管理している場合などは、労働者性が認められやすくなります。逆に、自由な働き方をしている場合は、雇用保険の対象外と判断されることが多いです。


  • 就業規則の適用

  • タイムカードによる勤怠管理

  • 従業員と同じ労働条件


加入できないケースもあるので注意!


役員であっても、すべてのケースで雇用保険に加入できるわけではありません。特に代表取締役や監査役など、経営の中枢を担う役職や、雇用契約が明確でない場合は対象外となります。


また、同族会社の役員については、実態調査が厳しく行われるため、形式的な兼務では認められません。加入できないケースをしっかり把握し、誤った手続きをしないよう注意が必要です。


代表取締役や監査役などは対象外


代表取締役や監査役など、会社の経営や監督に専念する役職は、雇用保険の対象外です。これらの役職は、会社の指揮命令下で働く労働者とはみなされず、経営責任や監督責任が主な業務となるため、雇用保険の趣旨に合致しません。


たとえ現場業務を一部兼務していても、実態として経営判断が主であれば、加入は認められません。


  • 代表取締役

  • 監査役

  • 経営専任の役員


雇用契約がない場合もダメ


役員と会社の間に明確な雇用契約が存在しない場合、雇用保険への加入はできません。雇用契約がないと、労働者性が認められず、被保険者資格を得ることができません。


また、就業規則や給与規定が適用されていない場合も、加入は難しくなります。契約内容や労働条件を明確にしておくことが重要です。


  • 雇用契約書がない

  • 就業規則が適用されていない

  • 給与規定が不明確


同族会社の役員は厳しくチェックされる


同族会社の役員が雇用保険に加入する場合、実態調査が特に厳しく行われます。家族経営の場合、形式的に兼務役員として給与を支給していても、実際には経営に専念しているケースが多いためです。


ハローワークは、業務内容や勤務実態、給与の支払い状況などを細かく確認します。虚偽の申請は後でトラブルになるため、正確な情報を提出しましょう。


  • 家族経営の会社

  • 形式的な兼務役員

  • 実態調査の強化


✅手続き方法をわかりやすく解説


役員が雇用保険に加入する場合、通常の従業員と同様に手続きを行う必要があります。ただし、兼務役員の場合は、労働者性や給与の支払い実態などを証明する追加書類が求められることが多いです。


手続きの流れや必要書類、実態調査のポイントを押さえておきましょう。


どこで手続きをするの?


雇用保険の加入手続きは、会社の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)で行います。新たに役員が雇用保険に加入する場合は、被保険者資格取得届を提出し、必要に応じて追加資料も提出します。


事前にハローワークへ相談し、必要な手続きや書類を確認しておくとスムーズです。


  • 管轄のハローワークで手続き

  • 事前相談が安心

  • 追加資料の提出が必要な場合も


必要な書類一覧


役員が雇用保険に加入する際には、通常の被保険者資格取得届に加え、労働者性や給与支払いの実態を証明する書類が必要です。


これらの書類を事前に準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。必要書類の例を以下にまとめます。


  • 雇用保険被保険者資格取得届

  • 雇用契約書または労働条件通知書

  • 就業規則・給与規定

  • 給与明細や賃金台帳

  • 役員報酬と給与の支払い明細


実態調査ってなにを見られるの?


ハローワークによる実態調査では、役員が本当に労働者として働いているかどうかが厳しくチェックされます。主に、業務内容、勤務時間、給与の支払い状況、就業規則の適用状況などが確認されます。


書類だけでなく、実際の業務実態が問われるため、虚偽の申請は絶対に避けましょう。


  • 業務内容の確認

  • 勤務時間・出勤記録の確認

  • 給与支払いの実態

  • 就業規則の適用状況


✅保険料や失業手当はどうなる?


役員が雇用保険に加入した場合、保険料の支払い方法や失業手当の受給条件は、一般の従業員とほぼ同じです。ただし、役員特有の事情や、退職時の状況によっては受給できない場合もあるため、注意が必要です。


ここでは、保険料の計算方法や失業手当の受給条件、万が一もらえない場合の代替制度について解説します。


雇用保険料はどのくらい?


雇用保険料は、給与や賃金に対して一定の料率で計算されます。役員が雇用保険に加入した場合も、給与部分に対して保険料が発生し、会社と本人がそれぞれ負担します。役員報酬には保険料はかかりませんが、労働者としての給与部分が対象となります。


最新の料率は毎年見直されるため、厚生労働省のホームページなどで確認しましょう。

対象

保険料の対象

負担割合

役員報酬

対象外

なし

給与(労働者分)

対象

会社・本人で折半

退職したら失業手当はもらえる?


役員が雇用保険に加入していた場合、退職後に失業手当(基本手当)を受給できる可能性があります。ただし、退職理由やその後の就業状況によっては、受給できない場合もあります。


特に、会社の経営に引き続き関与している場合や、形式的な退職とみなされる場合は、失業手当の支給対象外となることがあります。受給には「離職票」などの書類が必要です。


  • 完全に退職し、経営から離れることが条件

  • 離職票の提出が必要

  • ハローワークでの認定が必要


もらえない場合の代替制度とは?


役員が雇用保険に加入できず、失業手当も受給できない場合、他の公的制度を活用することが考えられます。たとえば、国民健康保険や国民年金への切り替え、または小規模企業共済などの自助努力型の制度があります。


これらの制度は、雇用保険のような失業給付はありませんが、退職後の生活を支えるための選択肢となります。


  • 国民健康保険・国民年金への加入

  • 小規模企業共済の活用

  • 失業手当以外の公的支援制度


✅他の保険とのちがいも知っておこう


雇用保険以外にも、労災保険や社会保険(健康保険・厚生年金)など、会社員や役員が関わる保険制度があります。


それぞれの保険には適用範囲や給付内容に違いがあるため、雇用保険との違いを理解しておくことが大切です。ここでは、労災保険や社会保険との主な違いについて解説します。


労災保険とのちがい


労災保険は、業務中や通勤中のケガや病気に対して給付が行われる保険です。雇用保険と異なり、労災保険は原則として全ての労働者に適用されますが、役員は原則対象外です。


ただし、特別加入制度を利用すれば、一定の条件下で役員も労災保険の対象となる場合があります。雇用保険と労災保険は、給付内容や加入条件が異なるため、混同しないよう注意しましょう。

保険の種類

対象者

主な給付内容

雇用保険

労働者(条件付きで役員)

失業手当・育児休業給付など

労災保険

労働者(特別加入で役員も可)

業務災害・通勤災害の補償

社会保険(健康・年金)との関係


社会保険(健康保険・厚生年金)は、役員も原則として加入対象です。雇用保険と異なり、役員報酬に対しても保険料が発生します。


そのため、役員は雇用保険には加入できなくても、社会保険には加入しているケースがほとんどです。雇用保険と社会保険は、加入条件や給付内容が異なるため、それぞれの制度を正しく理解しておきましょう。


  • 社会保険は役員報酬も対象

  • 雇用保険は労働者性が必要

  • 給付内容が異なる


✅会社としての対応ポイント


役員の雇用保険加入については、会社としても適切な管理体制や手続きが求められます。特に兼務役員の場合は、勤怠管理や給与の区分、就業規則の適用など、実態に即した運用が重要です。


また、加入の可否や手続きについては、ハローワークなどの専門機関に相談しながら進めることがトラブル防止につながります。ここでは、会社が押さえておくべき対応ポイントを解説します。


兼務役員の管理体制を整える


兼務役員が雇用保険に加入する場合、会社としてはその管理体制をしっかり整える必要があります。役員としての業務と従業員としての業務を明確に区分し、業務内容や指揮命令系統を文書化しておくことが大切です。


また、役員報酬と給与の支払いを分け、賃金台帳や給与明細で明確に記録しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。


  • 業務内容の区分を明確にする

  • 役員報酬と給与の支払いを分ける

  • 管理体制を文書化する


勤怠・給与・就業規則を明確に


兼務役員の勤怠管理や給与支払い、就業規則の適用は、雇用保険加入の審査で重要なポイントとなります。タイムカードや出勤簿で勤怠を管理し、給与明細や賃金台帳で給与の支払い実態を明確にしましょう。


また、就業規則や給与規定を兼務役員にも適用し、従業員と同じ基準で運用することが求められます。


  • タイムカードや出勤簿で勤怠管理

  • 給与明細・賃金台帳の整備

  • 就業規則・給与規定の適用


加入の可否はハローワークに相談を


役員の雇用保険加入については、判断が難しいケースも多いため、必ずハローワークに相談しましょう。事前に相談することで、必要な書類や手続き、審査のポイントなどを詳しく教えてもらえます。


また、実態調査や審査でトラブルにならないよう、正確な情報をもとに手続きを進めることが大切です。


  • 事前にハローワークへ相談

  • 必要書類や手続きを確認

  • トラブル防止のため正確な情報を提出


✅よくある質問まとめ


役員の雇用保険加入については、実際の現場でよくある疑問やトラブルも多いです。ここでは、よくある質問とその回答をまとめて紹介します。疑問点を解消し、正しい知識で手続きを進めましょう。


役員でも雇用保険に入っていた人がいるのはなぜ?


役員でも雇用保険に加入していた人がいるのは、「使用人兼務役員」として労働者性が認められたケースが多いからです。現場で従業員と同じように働き、給与が支給されていた場合、雇用保険の被保険者となることがあります。


ただし、実態が伴っていない場合は後から資格喪失となることもあるため注意が必要です。


途中から兼務になったらどうなる?


従業員から役員に昇進し、途中から兼務役員となった場合は、労働者性が認められれば雇用保険の資格を継続できる場合があります。


ただし、役員専任となった時点で労働者性がなくなれば、雇用保険の資格喪失手続きが必要です。状況が変わった場合は、速やかにハローワークへ届け出ましょう。


加入の証明はどうすればいい?


役員が雇用保険に加入していることを証明するには、雇用保険被保険者証や離職票、賃金台帳などの書類が有効です。また、ハローワークで発行される証明書類も活用できます。必要に応じて会社やハローワークに問い合わせてください。


  • 雇用保険被保険者証

  • 離職票

  • 賃金台帳や給与明細

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