歯科医師国保とは？協会けんぽとの違いや保障内容を徹底解説

歯科医師が安心して医療提供に専念するためには、自身の健康や万一に備えるための保険選びが不可欠です。中でも「歯科医師国保」は、開業医やフリーランスの歯科医師にとって非常に有用な制度と言えるでしょう。今回は、その制度内容や加入条件、協会けんぽとの違いまで、わかりやすく解説します。

✅歯科医師国保とは？

歯科医師国保とは主に開業している歯科医師を対象とした国民健康保険の一種で、各地域の国保組合を通して運営されています。通常の国保と異なり、歯科医師という職業に特化した制度で、医業に支障をきたす病気やけが、また出産に伴う経済的なリスクに備えられます。

この制度は、他の健康保険（協会けんぽや組合健保など）に加入していない、独立開業している歯科医師が加入対象です。雇用している従業員が常時4人以下の歯科医院に限り、歯科医師国保を利用できます。それを超える場合は、原則として協会けんぽの加入が必要です。

また、地域ごとの組合によって加入手続きやサービス内容が異なるため、加入を検討する際は所在地の組合に確認することが大切です。

歯科医師国保では、病気やけがに関する医療費の補助をはじめ、さまざまな保障制度が設けられています。

さらに、任意給付として以下のような制度が存在します（組合により異なります）。

歯科医師国保では、所得にかかわらず一定の保険料が設定されていることが多く、収入が不安定な開業医にとっては安心感があります。一方、協会けんぽは報酬に応じて保険料が決まる仕組みです。

協会けんぽでは、一定の条件を満たせば配偶者や子どもを「扶養」として追加でき、保険料の増額なく保険を利用できます。しかし、歯科医師国保には扶養という概念がなく、家族一人ひとりが個別に保険料を支払う必要があります。

協会けんぽの傷病手当金や出産手当金は、報酬の約3分の2を補償する仕組みで、非常に手厚いのが特徴です。対して、歯科医師国保では定額（日額1,500円など）での支給となるケースが多く、保障内容に差がある点は理解しておく必要があります。

ただし、一部の歯科医師国保組合では、協会けんぽと同等の報酬比例での支給を行っている場合もあります。

協会けんぽでは、産前産後や育児休業中に保険料が免除される制度があります。一方、歯科医師国保にはこうした制度がないのが一般的でしたが、2023年11月1日以降の出産から、国民健康保険でも産前産後期間の保険料免除制度が導入されており、歯科医師国保でも同様の免除が適用される組合が増えています。

開業にあたり歯科医師国保に加入する場合は、まず現在加入している健康保険からの適用除外申請を行います。これには、厚生労働省の定めた様式を使用し、勤務先経由で手続きするか、ご自身で市区町村の窓口にて申請を進めます。開業届の提出とあわせて、厚生年金の加入要否も検討しておくといいでしょう。

保険制度の選択は、単なる保障の有無ではなく、診療の継続性や家庭生活の安定にも直結します。開業当初の収入の不安定さや将来の事業拡大、育児や介護などライフイベントを考慮しながら、最適な制度を選ぶことが大切です。

国保か協会けんぽかで迷う際には、収入、家族構成、医院の規模、将来の展望を明確にし、信頼できる社労士や保険の専門家に相談すると安心です。