企業が従業員を雇用する際、特に短期雇用の業務では、就業前に業務の説明を行うケースが多くあります。この説明時間を労働時間とみなすか、または通常の賃金とは異なる金額を設定できるのかについて、多くの企業が疑問を抱えています。
本記事では、労働基準法に基づいた考え方を整理し、適切な賃金の取り扱いについて解説します。

✅労働時間とは?指揮監督下にあるかどうかが重要
労働基準法において「労働時間」とは、従業員が使用者の指揮監督下に置かれている時間を指します。ここで重要なのは、必ずしも身体を動かしたり、業務を遂行したりしている必要はないという点です。
例えば、運送業における待機時間や、作業前の準備・作業後の後片付け、そして始業前の説明会も、使用者が指示しているとみなされる場合には労働時間に含まれます。
一方で、休憩時間のように従業員が完全に使用者の指揮から離れ、自由に過ごせる時間は労働時間には含まれません。つまり、「使用者の指揮監督があるかどうか」が労働時間か否かの判断基準となります。
✅就業前の説明会は労働時間に該当するのか?
業務を遂行するために必要な説明を就業前に行う場合、それが従業員にとって必須のものであり、自由参加ではないのであれば、その時間も労働時間として扱われます。
企業側が就業要件として説明会の参加を求めるのであれば、その時間に対しても賃金を支払う義務が生じます。
ただし、業務に関する資格取得を目的とした研修など、従業員が自主的に参加する場合は、労働時間に含まれないこともあります。このようなケースでは、就業規則上の制裁がなく、完全に自由参加であることが前提条件となります。
✅始業前の説明会の賃金を通常の賃金より低く設定できるか?
多くのアウトソーシング企業では、顧客からの報酬が発生しない説明会の時間について、通常の賃金より低い時給を設定したいと考えます。この場合、以下のポイントを満たせば、異なる賃金体系を設定することが可能です。
異なる賃金体系が労働契約や労働条件通知書に明示されていること
就業規則に明確な記載があること
最低賃金法を遵守していること
従業員に対して適切に説明し、理解を得ていること
例えば、日給制の場合は1日単位で賃金を支払うため、説明会の時間のみを切り分けて別の賃金を設定することは難しいですが、時間給制であれば仕事内容ごとに異なる賃金を設定することが可能です。
✅企業が注意すべきポイント
説明会の賃金を低く設定する場合、従業員への説明が不十分であったり、契約書に明示されていなかったりすると、後々トラブルに発展する可能性があります。特に、最低賃金を下回る設定をしてしまうと違法となるため、注意が必要です。
また、従業員が「説明会の時間も通常の労働時間と同じ扱いを受ける」と認識している場合、実際に支払われる賃金が異なれば、不満や労働基準監督署への相談につながる可能性もあります。そのため、企業は賃金設定の意図を明確に伝え、就業規則や労働契約の中に明示することが重要です。
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