最低賃金法では、事業主は労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払う義務があります。しかし、特定の条件を満たす場合には、最低賃金の適用を除外できる制度が存在します。
本記事では、最低賃金の適応除外が認められるケースや申請のポイントについて解説します。

✅最低賃金の基本的な考え方
最低賃金とは、労働者の生活を保障するために定められた最低限の賃金額です。事業主は、最低賃金額未満の給与を労働者に支払うことは原則として禁止されています。
ただし、特定の条件を満たす場合には最低賃金の適用除外が認められることがあります。仮に最低賃金以下で雇用契約を結んだとしても、法律上は最低賃金額で契約したものとみなされ、未満の額しか支払わない場合は違法となります。
✅最低賃金に含まれない賃金の種類
最低賃金は、すべての賃金に適用されるわけではなく、以下のような賃金は除外されます。
臨時に支払われる賃金(ボーナスなど)
1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(年俸制の特定部分など)
時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金
通勤手当、精勤手当、家族手当など、特定の手当
✅最低賃金の適応除外が認められるケース
最低賃金は原則としてすべての労働者に適用されますが、以下のような場合には、事業主が申請することで適用除外が認められることがあります。
著しく労働能力の低い者
精神や身体的な障害により、通常の業務を遂行するのが困難な場合。
試みの試用期間中の者
減額の特例の対象となるのは、以下のように「試みの使用期間」中に減額対象労働者の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性がある場合に限られます。
・申請のあった業種または職種の本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であること。
・申請のあった業種または職種の本採用労働者に比較して、試みの使用期間中の労働者の賃金を著しく低額に定める慣行が存在すること**
職業訓練を受ける者
職業能力開発促進法に基づく養成訓練を受けている者。
特に短時間勤務または軽易な業務に従事する者
※軽易な業務とは、一般労働者の従事する業務と比較して特に軽易な業務に従事する者
✅適用除外申請の流れとポイント
適用除外を受けるためには、都道府県労働局長の許可が必要です。申請には以下のような手続きが必要になります。
適用除外の対象であることを証明する資料の提出
・労働契約書、診断書、就業規則などの書類を用意。
労働基準監督署による実態調査
・実際の業務内容や労働環境を確認するための調査が行われる。
適用除外の可否判断
・申請内容が適切であると認められた場合にのみ許可が下りる。
✅注意点と例外ケース
試用期間中であっても、適用除外の申請が必ずしも認められるわけではありません。特に、試用期間が単なる研修目的であり、業務を行わない場合は、最低賃金以上の給与を支払う必要があります。
また、研修中に無断で退職する労働者が多いという理由では、適用除外の申請は認められにくいでしょう。
✅まとめ
最低賃金の適用除外制度は、雇用の機会を確保し、現実的な労働環境に対応するために設けられた特例制度です。しかし、申請には厳格な審査があり、適用除外を受けるには十分な証明が求められます。
事業主の方は、この制度を適切に活用しつつ、労働者の権利を守ることも忘れずに対応することが重要です。
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