新たに従業員を採用する際、試用目的で有期雇用契約を結ぶことが一般的です。しかし、この場合には労働契約上のトラブルを避けるために留意すべき点がいくつかあります。以下では、試用目的の有期雇用契約についての注意点と、具体的な対応策を分かりやすく解説します。
✅無期雇用の試用期間と有期雇用契約の違い
無期雇用契約の場合、試用期間終了後に本採用を拒否することは「解雇」に該当します。解雇が認められるのは、合理的かつ社会的に妥当とされる理由がある場合に限られます。
一方、有期雇用契約であれば、期間満了時に更新されなければ自然に契約が終了するため、本採用の拒否とは区別されます。ただし、実務においては、有期契約の満了時に従業員が「実質的には無期雇用の試用期間と同じだ」と主張し、契約終了の無効を訴えるケースもあるため、注意が必要です。
✅裁判例が示す判断基準
過去の裁判例においては、試用目的の有期雇用契約に対して使用者側に不利な判断が示されています。
神戸弘陵学園事件
この事件では、雇用契約期間が従業員の適性を評価するための試用期間である場合、期間満了によって契約が終了することが明確に合意されていなければ、「試用期間」と解釈されるべきだとされました。これは、試用目的で契約期間を設けた場合でも、終了の条件が曖昧であれば、契約が無効とされる可能性があることを意味します。
福原学園事件
この事件では、3年の更新限度を設けた1年ごとの有期契約について、従業員が無期契約への移行を期待できる状況が認められ、結果として無期契約と同様の扱いが求められる判決が下されました。この裁判では、契約書に「無期契約に移行する条件」が明記されていたために、契約更新や登用における条件をあらかじめ明確にすることの重要性が強調されました。
✅試用目的の有期雇用契約における実務対応策
試用目的で有期雇用契約を結ぶ際には、契約期間満了時に自動的に雇用契約が終了することを明示しておくことが大切です。実務対応策としては、以下の点に留意しましょう。
求人票や契約書への明示採用時の求人票や雇用契約書において、有期契約であることを明示し、試用期間が会社と従業員の双方にとって適格性を評価する期間であることを説明します。正社員として採用されない場合は、契約期間満了により契約が終了する旨を明記しておきましょう。
正社員登用の明確な条件を設定正社員への登用は自動的に行われるものではなく、勤務成績等を評価して判断されることを明示します。また、使用者が登用する場合には、通知が行われることを条件に加えると、より明確です。これにより、登用に対する従業員の過度な期待を避けることができます。
✅明確な契約条件でトラブルを防ぐ
試用目的の有期雇用契約では、期間満了後のトラブルを防ぐために、契約終了条件や登用条件を明示することが重要です。これにより、従業員と企業の双方が契約の内容を理解し、合意に基づいた雇用関係を築くことができます。裁判例でも示されているように、明確な契約条件の設定は、将来的な労使トラブルを防ぐための有効な手段となります。
試用期間における有期雇用契約に関する手続きや対応についてお悩みの方は、ぜひ弊所にご相談ください。
Comentários