就業規則と労働慣行

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労働慣行とは、ある事実状態が反復更新されることによって、ひとつの制度として確立し、労働条件となって法的に保護されることになった状態のことを言います(「就業規則の知識<新版>(外井浩志著)」より引用)。

労働慣行が成立するためには以下の5要件を満たす必要があります。
(1) ある事実の取り扱いや制度と思われるものが
(2) 反復し継続して行われており
(3) その取り扱いや制度を一般従業員も所属長も認識しており
(4) 就業規則の制定・変更権限のある経営者が明示又は黙示的に是認しており、それを当然のこととして労使ともに異議を述べておらず
(5) 労使ともにそれに従っており、「ルール化」(規範化)している。

労働慣行が認められた判例

●宍戸商会事件(昭和48年東京地裁)
退職金規定はないが過去何回ともなく退職金を支払っており、その内容は退職者には基本給プラス諸手当に勤続年数を乗じた額の退職金を支払うという旨の慣行

●国鉄田町電車区事件(昭和43年東京高裁)
約13年間の長きにわたり存続していた勤務時間中の午後4時入浴、午後4時30分退社の慣行

●大栄交通事件(昭和51年最高裁)
55歳の定年退職制を定めているが、実際には定年退職扱いとせず引き続き特段の欠格事由のない限り、従業員を直ちに嘱託として再雇用することが常態となっており、過去何人もそのような取り扱いを受けている場合における再雇用制度の慣行の認定

●大和銀行事件(昭和57年最高裁第1小)
賞与の在籍日支給について、賞与を支給日に在籍している者のみに支払う慣行

就業規則と労働慣行

就業規則の内容とは異なる労働慣行や就業規則に書いていない労働慣行(暗黙のルールやローカルルールなど)が成立した場合に就業規則の変更はしなければならないのかという問題があります。 労働慣行が成立した場合にはその労働慣行の内容が労働条件として成立することになります。労働条件として成立している以上、就業規則を変更しなければならず、その就業規則を労働基準監督署に届け出る必要があります。

違法な労働慣行

違法な取り扱いが長い間続いていた場合、それが労働慣行として保護されるか否かが問題となります。 強行法規に違反している以上、法的に保護されることはありえません。たとえば、今まで割増賃金を支払ってなかったことが労働慣行として成立していたとしても法的に保護されることにはなりません(「就業規則の知識<新版>(外井浩志著)」より引用)